ラーメン屋成功論

ラーメン屋成功論―100の法則より1つの制度

ラーメン屋成功論―100の法則より1つの制度

概要

来来亭社長が自社について書いた本.本文にもあるとおり,リクルート用に出版.1200円と高めだが,表紙に1200円分の割引券と交換できるチケットが付いているため,元をとることは可能.ただし,割引券は1枚200円で一回に1枚しか使えないので注意.お店に本が置いてあって待ちながら読めるので,試しに読んで気に入れば会計時に購入するとよい.


ラーメン業をビジネスであると割り切り,儲けるためにしんどくても当たり前のことを当たり前にやる姿勢を貫いている.また,労働時間や給与,のれん分けの仕組み,社員の評価制度なども公表している.美辞麗句で飾ることなく地に足のついた経営方針が読み取れ,好感が持てる.

内容

Q 1 来来亭とは?

滋賀が本拠地.1997年3月〜.2008年10月現在,124店舗.年商100億円.味は「最高の90点」

Q 2 来来亭が本を出版した理由は?

リクルートのため.パンフレットを作るのも高い.いっそ本のほうがありのままをかける.

Q 3 来来亭のラーメンで絶対に抜けないものは?

情熱.どんぶりは沸騰したスチールたらいで温める.動物性スープ(鶏ガラ+豚の背脂)は温度が下がると臭みが出るし,鶏ガラは沸かすと白濁して味が劣化する.

Q 4 社長がラーメンを選んだ理由は?

一杯600円だから.焼肉は単価が下がっていたがラーメンの価格は安定していた.大学時代のアルバイトで飲食業はがむしゃらに働けば必ず報われると知った.

Q 5 来来亭が誇る「制度」とは?

のれん分け.花より団子,まず店長の給料を上げた.さらに独立させてがんばったら報われるようにした.

Q 6 独立してオーナーになる条件は?

入社3年で店長2年.洗い場→ホール→厨房すべてを経験.独立したらすべての設備を会社から買い取る.メリットは

  1. 人材を集めやすい
  2. 従業員のモチベーションが上がる
  3. 来来亭全体として長生きできる
Q 7 これまでに独立した社員の数とその所有店舗数は?

オーナー48人,店舗67.フランチャイズフランチャイザーの関係は良好ではない.独立すれば同じ立場.

Q 8 これまで独立したお店で閉店したお店は何軒?

1件.支払いの滞納.店舗の賃貸契約のみ本部が借主となっている.

Q 9 来来亭の入社条件はいくつ?

二つ.健康であることとやる気があること.ただし覚悟は必要.問題をクリアするのは大変だが,一度クリアすれば次からは問題ではない.精神レベルが上がるから.一時の頑張りで,残りの人生をのびのびと暮らせる.以下のようなタイプの人間がオーナーになる.

  • 綿密な将来設計ができて,それ相応の覚悟を持ってくる人
  • 将来のことは考えられないけど,”今日を精いっぱいやりとおすこと”を積み重ねられる人
Q10 来来亭フランチャイズシステムがないのはなぜ?

お金がないとだめだとなると,がんばれなくなる.ロイヤリティを払うのが嫌になる.情熱もかけられない.ジーとザ―の関係が悪いことが多い.

Q11 社員の一日の実労働時間は?

残業込みで11時間.早番7-18時,中抜け11-15時・18-25時,遅番15-25時.早番はすべての仕込みをする.責任重大.

Q12 営業終了後にやらなければならない大切な仕事は?

アンケートを読み,要望・クレームをノートに書く.クレームにはお詫びの手紙を出す.飲食店に王道なし.白い紙をひたすら塗りつぶす作業.売り上げの数字を追うのではなく,当たり前のことを積み重ねる.

Q13 従業員の初任給と昇給額の単位は?

25万円以上,1万円単位.副店長35万円,店長50万円.毎月査定.ボーナスは夏冬2回,1か月程度.

Q14 社員のうちラーメン屋未経験者は何パーセント?

79%.当たり前のことを当たり前にやり続けられること.繁盛する店には人柱的存在が必要.

Q15 来来亭1店舗あたりの年間平均売上は?

1億円.営業時間は13時間で年中無休.36席ただし8割.客単価850円.

Q16 社長(僕)が来来亭創始者からお店を買い取った金額は?

3800万円.売上月450万円だったものを買わないかと言われた.1200万円を頭金.100万円26回払い.

Q17 社長が師と仰ぐ存在は?

「北風と太陽」の太陽.お客にもスタッフにも,強制ではなく自発的に動くような状態を作る.

Q18 完全主義の社長が放任主義に変わったきっかけは?

結核

Q19 社長が思うビジネスで成功する秘訣は?

運とのめぐりあわせ,やることをやる.自ら苦しい道を選ぶのは化石.上手くいっている人の心がけを真似てみる.土地を愛する.

起こったいいことは「おかげさま」,自分にとって起こった不都合なことは「自己責任」

Q20 来来亭が上場する予定は?

興味がない.身の丈・性質・特性を知ることが重要.

Q21 セントラルキッチンを作らずにスープを各店舗で手作りする理由は?

スタッフの信用が得られない.五徳を6台並べて3時間煮込んで使用開始,5時間で廃棄.なるべくバラツキが少ないようにしている.

Q22 来来亭のラーメン はたしてその食材原価は?

約30%.

  • 食材費:30%
  • 人件費:25%
  • 水光熱費:8%
  • 家賃:7%
  • 備品:2%
  • 営業利益:18%

付加価値が重要.大きな声であいさつ,ニコニコ笑顔で対応,キビキビとした行動

Q23 今後の新規出店のペースは?

直営店,年間20店舗.

Q24 来来亭の出店のポイントは?

地域密着度の強い生活道路沿い.1万円の純利益を上げるのにラーメン50杯.ランニングコストが安いほうがよい.また,目指していく場所にあるほうがモチベーションが上がる.

Q25 2008年9月末の時点で複数店を所有しているオーナーは何人?

8人.直営店の店長が退職する際にオーナーに打診するパターンと,独立オーナー自ら新規出店するパターン

Q26 独立時の譲渡金額は?

1か月の税引き前利益の15カ月分.約3000〜4500万円.36回3年で返済.

Q27 来来亭が税務調査で指摘されたことは?

社長の給料が高すぎる,のれん分けの譲渡金額が安すぎる.従業員に後ろ指さされない範囲なら堂々ともらってOK.

Q28 来来亭の社員として一番必要とされることは?

人間的な魅力.会議で売り上げ(結果)が話題になることはない.原因,要員すなわち「魅力論」.

Q29 来来亭の本部スタッフの人数は?

14人.社長1人,マネージャー4人,店舗開発部長1人,システム1人,取締役の経理3人,経理3人,経理パート1人.

Q30 今後の来来亭の事業展開は?

ラーメン屋一本.ラーメンは提供時間が早い,かついつでも食べられる.47都道府県制覇,300人の独立オーナー輩出が夢.

感想

名ばかり管理職の問題などが多い外食産業であるが,来来亭に関してはそのあたり割り切った方針が見受けられる.しんどいが,しっかりと経験を積むことで独立オーナーになれる道筋を示し,社員のやる気を増進させている.また,店長の給与も月50万円x13か月であるのでそこそこ高い.


また,月の売り上げが200万円,営業利益が40万円となる計算.