働くことがイヤな人のための本
- 作者: 中島義道
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2010/02/02
- メディア: 文庫
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概要
悩みを抱えるA〜Dさんの質問に先生(著者)が答えながら進む.特に,法学部学生で社会に失望・恐れを抱き引きこもっているA君がキーパーソン.
成功した人等,特別なケースは脇に置き一般人が働くことについて掘り下げる.社会は不合理であり,まじめに努力したから報われるわけではない.しかし,成功しなかったことを清貧であるが故,と片付けるのもおかしい.社会の不合理について目をそらさず一生をかけて哲学することが豊穣な人生をもたらす.
また,いつまでも頭の中でぐるぐると考えていても意味が無い.ひとしきり考えたら社会に出て実際に働くことが大切.お金を得る=客観的評価(公正ではない)ことで揉まれ,磨かれていく.
目次
1.一生寝ているわけにはいかない
2.「命を懸ける仕事」はめったに与えられない
3.仕事と能力
4.仕事と人間関係
5.仕事と金
6.金になる仕事から金にならない仕事へ
7.死ぬ前の仕事
感想
若者がすぐに会社をやめる,と言われて久しい.しかし,新卒採用の現場を見れは原因の一端は理解できる.「自分探し」なるものをとことん強要され,面接では以下の様な中途採用さながらの自己PRが要求される.
・やりたいこととその理由
・学生時代の実績(研究・ボランティアetc)
・自身の強みとそれが会社に貢献できる理由
しかし,自分探しの果てに就職して待っているのは全く無関係な雑用である.あれだけ面接でマッチングしたのにそんな仕事はそこにはない.ああ,俺は会社に期待されていないんだな,と悟る.二十数年の人生が否定されたようにすら感じる.
会社からすれば殺到する学生をふるいにかけるためにやっているだけ,学生のおままごとレベルの専門性などどうでもいいわけだが,学生にはそれが理解できない.徹底した自分探しの果てに獲得した自分への幻想を捨てることはできない.
しかし,この本にある通り実際に働かなければ自分は見えてこない.無理に我慢して働く必要もないが,自分への幻想も捨てなければならない.
入社1年目の自分に読ませたかった本.でもきっと,あの時は理解できなかっただろうなぁ.