伝える力

伝える力 (PHPビジネス新書)

伝える力 (PHPビジネス新書)

他著者情報

1950年長野県生まれ.慶応出身.1973〜2005年NHK職員.94〜05週刊こどもニュース

読書期間

2011/3末ぐらい

概要

第1章〜第3章は伝える上で必要な心構え・態度等.第4章〜第8章は伝えるためのテクニック.さすがの著者なだけあって,分かりやすい.

目次

第1章 「伝える力」を培う
第2章 相手を惹きつける
第3章 円滑にコミュニケーションする
第4章 ビジネス文章を書く
第5章 文章力をアップさせる
第6章 わかりやすく伝える
第7章 この言葉・表現は使わない
第8章 上質のインプットをする

ポイント

第1章 話す前に理解する.相手の話を聞く.相手を観察する.

  • 自分が意味が分かっていないことを伝えようとしても相手は理解できない.
  • 調べるときにはただインプットするのではなく,全く知らない人に説明するにはどうするかまで意識すると理解が深まる.
  • 自分が物事を知らないことを知る.そのことを畏れる.
  • 謙虚に人の意見に耳を傾ける.意味のないプライドはせっかくの成長を妨げる.心を開き続け,恥を恐れないこと.(ビジネスマンは話すことも書くことも,その道のプロではない.)
  • 良い聞き手になるには相手に気持ちよく話してもらう必要がある(客はセールスパーソンを選ぶ).

「へぇー」「それ,おもしろいですね」「スゴイですね,それは」「それは知らなかった」「それで,どうなったんですか?」「ぼくにも教えてくださいよ」

「それはどういうことですか?」「もう少し詳しく聞かせてください」「へぇー,そんなことがあるんですか.でも,どうしてそうなったんですかね?」

  • 自分のことばかりでなく,相手のことを聞くのは社会性の一つ
  • 「へぇー」は伝える力のバロメータ


第2章 つかみについて

  • 映画・連載記事・テレビドラマ・コマーシャルを分析してつかみを研究し,話し方や書き方の向上に役立てる
  • 自分の失敗談はつかみとしてよい(他人の失敗談は面白い)
  • わざと反対のことを言う,意外な話から始める,時系列を逆転させる
  • 時間間隔は重要(10秒:かなりのことが言える,30秒:起承転結,15分まではテーマをひとつに絞る)
  • 新婦をけなすのは断じて禁止.新郎を茶化して新婦を褒めるのは許される.ただし,行為と愛情をもって.型を崩して良いのはあくまで型があるから.
  • ウケ狙いはリスク大(人の顔は潰すな)
  • ミーティングでは自信を持って相手の顔をしっかり見る.キーマンから一人ひとりに目線を移す.事前の準備が重要.


第3章 危機管理意識=悪口言わない,けしからん罪には謙虚さ・謝罪→クレームに応用

  • 危機管理意識はつかみと同様に重要.爆笑問題:太田=つかみ,田中=危機管理
  • 毒舌芸能人がウケるのは1.人柄,2.愛情,3.有名人効果.一般人が真似するな.
  • 村上世彰もの言う株主)の会見は本心から反省していなかった→世論操作がバレて嫌われた
  • 「けしからん罪」「濡れ手に粟罪」→「ごめんなさい」の一言が危機管理になる
  • アメリカは儲けた人がえらい社会→偉そうな発言もOK.日本は1.羨ましい(がんばろう),2.ずるい(足を引っ張ろう).嫉妬社会.
  • 謙虚な姿勢や雰囲気(おかげさまの精神)を持っていれば成功しても裁かれない
  • 本音だけでもダメ,建前だけでも白々しい.そんなときは建前中心に本音を少し差し挟むと好感度上昇(少しカジュアルな雰囲気に).
  • 陰口は言わない.悪口をいうときは面と向かっていえるレベルで.
  • 叱るときは1:1.大勢の前では恥をかかされてる意識が先立つ.そういうテクニックもあるが高等テクで厚い信頼関係が必要なのでおすすめできない.
  • 叱る前に褒める.相手を認めて尊重した上で注意すれば反発は避けられる.
  • 褒めるときはみんなの前で褒める

顧客の前ではよその会社の悪口やうわさ話を絶対に言ってはいけません.

  • クレームを言うときは名乗る,立場・理由を明確化.全体像を具体的にイメージさせる.

苦情を生かすには,やはり「伝え方」が重要です.
まずは自分がどういう者か伝える.
その後,どうして電話をしたのか,全体像が相手にわかるように話す.
自分として,どう対応してほしいのか,その希望・要望を明確に伝える.
話すときには,なるべく穏やかに,落ち着いて,普通の声音で話す.

  • 苦情対応では穏やかに聞き返す.クレーマーなら建前の話で終始させ,理解を示す発言は一切控える.


第4章 報告書の書き方
1.フォーマットを身につける
2.優れた文章を書き写す(読み込んだ中からこれはと思う物)
3.現地調査は報告書のフォーマットを意識しながら素材を探す.
4.報告書,提案書は帰納法が原則.ただし穏やかな演繹法で時間を節約.仮説と異なる現実を喜ぶべき
5.五感を大切にして現場の空気感をさりげなく入れる(一箇所)=臨場感.
6.美辞麗句は人の心を動かさない


第5章 文章力UP訓練
一人ブレーンストーミング=もう一人の自分にツッコミさせる
長い文章は1週間ほど寝かせる.無理ならせめて一晩.
音読でリズムを確認.
先輩のアドバイスを謙虚に受け止める,学ぶ気持ちを大切に.
書く前に同僚や先輩に話しながら書くべき内容を整理
新聞の記事を短くする訓練(天声人語:630文字→300文字).文章力・考える力向上
新聞の記事を増やす訓練(天声人語:630文字→800文字).エピソード・つかみの文章量等周辺部分を厚く.


第6章 補助表現手段

  • カタカナ語は便利だが不快に感じる人も.日本語で表現しようとすることで厳密な議論もできる.

カタカナ用語を使うのは,互いに通じる相手だけに限る.
これは最低限,守るべきことです.
また,それとともに,カタカナ用語を他の表現で言い換えてみる.
そうすることで,その用語やそれにまつわる事柄の理解がいっそう深まることでしょう.

  • 「〜性」「〜的」はごまかしが利く言葉→踏み込んだ思考をしていない=思考停止
  • 相手が年配であれば漢語表現・四字熟語の使用は印象が良くなる.ただし乱用は避けてスパイス程度に.

「簡単なことは簡単に」「難しいことも簡単に」
これは,何かを伝えるときの基本です.

「貴社には○□のよいことがある商品を,当社が新たに開発しました」

  • 図解の目的 1.理解の補助,2.アイデアうかぶ,3.伝える手段
  • 矢印の意味 1.時間の経過 2.論理の流れ 3.因果関係 上から下へが基本


第7章 接続詞に注意

  • 接続詞をなるべく使わない.「そして」「それから」→制限することで文章の論理を先鋭化.順接の「が」.「ところで」「さて」.「いずれにしても」※絶対にダメ→それまでの論理展開が破綻.絵文字.


第8章

  • 伝える力を養うにはビジネス書・ハウツー本以外に小説がおすすめ.小説はイメージを喚起させ,膨らませる.文章構造を分析するもう一人の自分を時々発動させて小説を読むと良い.
  • 小説を読むことで様々な体験をし,人生の勉強になる.人間としての幅となって現れる.語彙力も増える.
  • 落語の間のとり方は最高
  • スケジュール管理が重要.週刊タイプで左ページに仕事,右ページにプライベートの予定.バックアップも準備.
  • 年末・年明けに一年の主なスケジュール・行事を書き込む(参議院選挙の公示日,郵政公社が民営化,韓国大統領選挙).新聞の今年一年の予定を参考に.→先々を考えた仕事が出来るようになる.プライベートの記念日も相手を喜ばせることができる.
  • 左ポケットには現在抱えてる仕事関係の名刺,右ポケットにはよかった居酒屋・レストランのカードなど

ひとことメモ

個々の節は分かりやすいが,もうちょっと全体像をつかみやすい構成にはならなかったのだろうか.2時間程度で読めてよい.

調査事項