子どもの脳を傷つける親たち
要約
マルトリートメントを受けた子供の脳は器質的に変化する。これは子どもにとって生存上危機的状況を生き残るために適応した結果であると考えられる。
適切な治療で回復する可能性はあるが、そもそも脳が変形するようなしつけはおかしい。適切なコミュニケーション、スキンシップで(双方に)愛着を育てることが大切。
内容
序章 健全な発達を阻害する脳の傷つき
- マルトリートメントに起因する社会的損失は小さく見積もっても1兆6000億円
第一章 日常の中にも存在する不適切な養育
- 虐待の定義
- 行為が軽かろうが弱かろうが、子供のためだと思ってした行為であろうがなかろうが、傷つける意志があろうがなかろうが、子どもが傷つく行為は、すべて「マルトリートメント」
- 家庭という場所や、時間を子どもと共有していても、きちんと向き合うことをせずに自分の生活や欲望ばかり優先させているならば、その行為はネグレクト
第二章 マルトリートメントによる脳へのダメージとその影響
- 体罰:前頭前野が約20%、右前帯状回が約17%萎縮
- 性的マルトリートメント:視覚野が8%、紡錘状回が18%萎縮
- 暴言:聴覚野が約14%肥大
- 面前DV:視覚野が約6%萎縮、血流が約8%増加
- 愛着障害:一次視覚野が約20%萎縮
第三章 子供の脳がもつ回復力を信じて
- 薬物療法と心理療法を併用
- 心理療法では新たな意味付けを行う「暴露療法」遊びを通してトラウマを開放する「遊戯療法(箱庭療法)」レム睡眠状態で遠い過去のように処理する「EMDR」など
- レジリエンスは「保護因子」に関係。
- 個人的な特性:高い知能、自己肯定感、前向きな気質
- 家庭的な特性:暖かな家庭、連帯感、両親の積極性
- 地域的特性:社会のネットワークの充実
- 心的外傷後成長:強烈なトラウマを体験したあとの成長
第四章 健やかな発育に必要な愛着形成
- 「安全基地」
- 愛着の形
- 安定型
- 回避型:態度に示さない
- 抵抗型:激しく動揺
- 混乱型(マルトリートメントを経験)
- 反応性愛着障害:天の邪鬼
- 脱抑制型対人交流障害:誰彼構わず愛着を求める
- 積極的に使いたい三つのコミュニケーション
- 繰り返す
- 行動を言葉にする
- 具体的に褒める
- 避けたい三つのコミュニケーション
- 命令や指示
- 不必要な質問
- 禁止や否定的な表現
終章 マルトリートメントからの脱却
- 虐待の連鎖は1/3
- 養育脳を活性化させるオキシトシンはスキンシップ、楽しい語らい、愛情を伝え合うことで分泌
感想
親の喧嘩を見聞きするだけでも影響がある。言葉遣いには最大限気をつけなければいけない。
また、子どもの世界では親の言うことがすべてある、ということも忘れないようにしないといけない。大人の感覚で軽口を叩いたつもりでも、子どもは全く違う受け取り方をする。自分が子供の時、どう感じていたかを思い出そう。