2日で人生が変わる「箱」の法則

2日で人生が変わる「箱」の法則

2日で人生が変わる「箱」の法則

概要

「箱の本」二冊目である.一冊目と比較して,箱についてより細かく解説している.「あり方」への導入は一冊目のほうがより丁寧なので,一冊目を先に読むのがよい.


重要なのは行動なのではなく,心のあり方である.自身の願望を裏切ったとき,人は箱に入る.箱には「優越」「当然」「体裁」「劣等感」の4種類がある.箱に入った状態では相手も箱に入ってしまい,共謀の図式が完成する.


箱から出るには箱にいることに気付き,箱の外にいた時の気持ちを思い出し,状況を考え直し,自分の願望にしたがって行動する.

内容

第1部 心の平和

Chapter1 砂漠の敵対者

  • キャンプ・モリヤ
  • 敵対関係を乗り越えた二人の指導者
  • 「行くかどうかはきみしだいだ」
  • 大人のための二日間のプログラム


Chapter2 深層にある問題

  • 一日目のスタート
  • 「一番気になるのは,お子さんのことではありません」
  • まず変えなければならないこと
  • 変化のピラミッド
  • 変えようとしても変わらない
  • 奥深い問題
変化のピラミッド
     /\  間違ったほうに向かっていることに対処する
    / ̄ ̄\
   /    \
  /      \ 正しいほうに向かうよう手助けする
 /        \
/          \
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

ピラミッドの下の部分を成し遂げることができなければ,上の部分を成し遂げることはできません.


Chapter3 戦時の平和


Chapter4 行動の裏側

  • 人間味ある行動
  • 「あり方」の問題
  • 人と見られるか,物と見られるか?
  • 先の見えない交渉
  • 子供からにひどい仕打ち
  • ふるまいより重要な問題
あり方の図式

           【行動】
         ・エルサレム侵略
       ・財源を使って人々に報いる
         /      \
        /        \
                                                                                                    • -
      /   【あり方】    \      /              \ 「心が平和」            「心が敵対的」 他人も人である:          他人は物である: 希望,欲求,心配,不安       邪魔者 が自分自身のものと同じ       手段 ように現実的            無関係


交渉では人を人として見る人が強い.平和な心で問題に対して明晰な頭で決定を下せる.相手の立場を十分に考慮し,理解できる.


世の中の大半の問題は戦略が問題なのではなく,あり方が問題.


Chapter5 対立のパターン

  • 不条理な要求
  • 敵対的な心が広がる
  • 「共謀」の図式
  • 「不愉快な相手」だと思わざるを得なくなるとき
  • 堂々めぐりする不満
共謀の図式

3.私の行動    --->   4.彼女の見方
抗議する           一つのもの:
彼女に教える         自己中心的
傲慢な態度で応じる      思いやりがない
               未熟
仲間↑    私 VS 彼女     |仲間
  |               ↓
2.私の見方   <---    1.彼女の行動
一つのもの:         尋ね,不満をもらし,
要求がきつい         しつこく頼んで私が
理不尽            行うことを強く強要
小うるさい          する
じゃまもの

対立:受動的.たまたま生じる.
共謀:当事者たちが反対しているまさにその事柄を引き起こしてしまう対立


Chapter6 エスカレート

  • 仲間を求める理由
  • 会社でも起こっている共謀の状況
  • もし,相手側が明らかに間違っていたら?


Chapter7 正しいこと,正しい方法

  • 相手に対する「あり方」も,正しいか?
  • 父の心
  • ルーの優しさ
  • 出会う人すべてを人として見る
第2部 平和から闘争へ

Chapter8 現実

  • つながらない電話
  • ここで学ぶ必要性


Chapter9 思想の由来

  • 「物」と「人」という考えは,どこから生まれたのか?
  • 「我思う,ゆえに我あり」
  • 二通りの「あり方」

「独立した自己」→「他者とともに存在する」

Chapter10 闘争を選択する

  • 闘いの悲劇
  • なぜ,私は硬貨を拾えなかったのか?
  • 自分が悪いんじゃない
  • 自分自身に背く行為


Chapter11 闘争の必要性

  • 曲がった壁は正しくする必要がある
  • もし彼が,本当に問題のある人だったら?
  • 人を蔑むという苦痛
  • 怒りと恨みの原因
  • 「虐待された女性が虐待者を憎むのは間違いだと言うの?」

現在何もできないということで,過去のひどい扱いが消え去るかもしれないけれど,現在のふるまい方によって,その記憶を持ち続けるかどうかが決まります.人を物と見れば,自分を正当化するために自分がこうむった不公正にこだわるようになる.ひどい扱いと苦しみをよみがえらせて.反対に,人を人として見れば,正当化する必要がなくなります.すると,自分が被った最悪のことにこだわらなくなり,最悪のことを忘れ,他人の中に悪いところだけでなく,よいところを見ることができます.


Chapter12 争いの種

  • 自己正当化の四つの特徴
  • 「優越」の箱
  • せっかくのバレンタインデーに!
  • 無益な考えと苛立ち
  • 「当然」の箱
  • 寛大な心の正体


「優越」の箱

自分自身に対する見方 他人に対する見方 世の中に対する見方 感情
優等 劣等 競争的 苛立ち
重要 無能/問題にならない 不安定 侮蔑的な気持ち
有徳/正当 不確実/間違っている 自分を必要としている 無関心


「当然」の箱

自分自身に対する見方 他人に対する見方 世の中に対する見方 感情
賞賛に値する 勘違い 不当 権利がある
ひどい扱いをされる/被害者 ひどい扱いをする 不公平 恵まれない
真価を認められない 恩知らず 私に借りがある 憤慨


Chapter13 さらに広がる争い

  • 「体裁」の箱
  • 「レタスなど拾っていられないというわけね!」
  • 「劣等感」の箱
  • 人とうまくやれないことへの言い訳


「体裁」の箱:寛大になる,身動きが取れなくなる

自分自身に対する見方 他人に対する見方 世の中に対する見方 感情
立派でなければならない 批判的 危険 不安/心配
偽者であるという思い 脅迫的 注視している 愛情に飢えている/圧力を受けている
  私の聴衆 私を評価する 圧倒されている


「劣等感」の箱

自分自身に対する見方 他人に対する見方 世の中に対する見方 感情
劣等 有利な点を持っている 厳しい/困難 無力
不完全 特権を持っている 私に敵対的 妬ましい/つらい
運命付けられている 恵まれている 私を無視している 憂鬱


Chapter14 闘争への道

  • 敵対的な心がすべてを台無しにする
  • 見かけだけの思いやり
  • 「彼のせいじゃない.私がそれを選んだのよ」
  • どのように「あり方」を変えるか?
  • 自分にそむく気持ちが起きなかったら?
  • 願望
  • 義務感に振り回されてしまう
  • 私たちは一生,箱を作っていく
第3部 闘争から平和へ

Chapter15 謝罪

  • 三〇年間の過ち
  • 心の中の闘い


Chapter16 戦時の贈り物

  • 二日目の朝
  • 父の死
  • 親友ハミッシュ
  • 孤独な日々
  • 二度目の自殺未遂とサバイバル・プログラム
  • ジェニーに起こった奇跡

しかし,孤独な人間にありがちなように,私は社交的な人たち以上に他人に心を奪われていた.そう,私は人と離れているときでさえ,実際は一人ではなかった.


Chapter17 裸足の行進

  • 靴を脱いで,何が起きたのか?
  • 箱から抜け出す手助け
  • 「今の地位を謳歌するのはいけないことか?」
  • ケイトも靴を脱いでいた!


Chapter18 降参

  • 絶望的な気持ち
  • 人は変えられないが,変わろうという気にはさせられる
  • すべてが変わり始めた夜
  • 友という贈り物
  • 一粒の種と手紙の行方


Chapter19 心の平和を探し当てる 

  • 箱から脱出するための四つのプロセス
  • 澄んだ心を取り戻す
  • 自分の中の箱を捜す
  • 「優しい気持ち」が,自分を箱から出してくれる
  • 新しい見方


Chapter20 外界の平和を見つける

  • ユースフの闘い
  • 革命を求めて
  • ベン教授との出会い
  • 打ち砕かれた偏見
  • 世界の見方を変える質問
  • 「モルデカイのために!」
  • 手遅れにならないうちに


Chapter21 行動

  • 箱から脱出するための最後のステップ
  • 箱の外にいつづけるために
  • 心の平和を取り戻す

澄んだ平和な心を取り戻す(四つの要素)

箱からの脱出

1.箱の兆候を探す(非難,正当化,冷酷さ,よくある箱のタイプなど)
2.箱の外の場所を見つける(箱の外の人間関係,記憶,行動,場所など)
3.状況を改めて考える(すなわち,箱の外の観点から).次のような質問をする
4.私が見つけたことに基づいて行動する…私がすべきだと感じていることをする


3.での質問内容

  • この人やこの人々の難題,試練,重荷,苦しみは何か?
  • 私や私の所属するグループが,その難題,試練,重荷,苦しみをどのように増大させているか?
  • 私や私のグループが,この人やこのグループを他のどんなやり方で,ないがしろにしたり,虐待したりしてきたか?
  • 私の優越,当然,体裁,劣等感などの箱が,どのように他者と私自身についての真実を見えなくし,解決を妨げているか?
  • この人やこのグループのために,私は何をすべきか?助けるために何ができるだろうか?

いったん脱出方法を見つけたら,箱の外にとどまるための鍵は,あなたがすべきだと思うことをすることにあるのです

選択の図式

    気持ち/願望
      モルデカイに硬貨を拾ってあげる
      (モルデカイを自分自身と同じように
       重要な意味を持つ,欲求,苦労,心配
       恐怖心を抱く人としてみる)
    
      私の心は平和である
          |
          選択
        /     \
気持ちにしたがう      気持ちにそむく

モルデカイを自分と     自分にそむいたことを正当化するように
同じ人と見つづける     モルデカイを見るようになる
              彼は非難されるべき物になる

              私の心は闘争状態になる


闘争状態になると

私に対する見方 モルデカイに対する見方 世の中に対する見方 感情
優越 そこにいる権利はない 不当 怒り
被害者(多くの貸しがある) 私から平和を奪う 不公平 憂鬱
悪い(しかし,そうさせられた) シオニストのおそれあり 過酷 苦々しい
よく見られたい 偏狭 私に不利 自己正当化


闘争状態の心によくあるタイプ

  • 優越
  • 当然
  • 体裁
  • 劣等感
第4部 平和の波及

Chapter22 平和の戦略

  • 和平のピラミッド
  • まず自分が「箱を出る」
  • 「教える,伝える」――相手に理解してもらえなければ始まらない
  • 「聴き,知る」――自分は耳を傾けているだろうか
  • 「関係を築く」――相手の問題点を責める前にすべきこと
  • 「影響力を持つ他者との関係を築く」ということ
和平のピラミッド

 間違ったほうに向かっていることに対処する
         /\ 正す  
        / ̄ ̄\ 教え,伝える
       /    \ 聴き,知る
行動    /      \ 関係を築く
_____/        \ 影響力を持つ他社との県警を築く
あり方 /          \ 箱から脱出する,平和な心を獲得する
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   正しいほうに向かうよう手助けする

教訓1 ピラミッドの下段に時間と労力を注ぐこと
教訓2 ピラミッドのある段の問題の解決策は,その段より下にある
教訓3 ピラミッドの各段階で効果を上げられるか否かは,ピラミッドの最下段――あり方――にかかっている


Chapter23 教訓

  • 和平のピラミッドが示す三つの教訓
  • 会社や家族の問題で,ピラミッドをどう使うか?
  • 私たちは完璧ではない


Chapter24 モリヤ山の平和

  • 希望の山
  • すべては内面の平和にかかっている

外面的な闘争は避けられないとしても,心は平和な状態で戦うことができるのです.

感想

「怒らないこと(アルボムッレ・スマナサーラ)」と内容的に一致する部分が多くみられたので関連性をまとめる.


平和な心で戦うというのは,以下の一節と一致する.

本当の愛情があって,怒りがなければ,人間は王さまのような感じで生きていられるのです.誰かが悪いことをしていたら「それは悪いことですから,やめなさい」と言うだけ.それだけで終わるのです.怒らない人は自信があって落ち着いているから,怒っている人が相手でも感情のぶつけ合いになりません.


自分が間違っているかもしれないと疑うこと,これは次の一節に一致する.

「自分が正しいという考え方は,非合理的で,非真実で,嘘で,あり得ないことだ.このあり得ないことを頭で徹底的に信じている自分ほどの大バカ者は,世の中にはいない」


「優越の箱」から出ることは「正しい『平等』を理解する」「『自分は偉い』というエゴを捨てる」,「当然の箱」から出ることは「『生きがい』などにこだわらない」,「体裁の箱」から出ることは「『他人に負けたくない』というエゴを捨てる」,「劣等感の箱」からでることは「『自分はだめな人』というエゴを捨てる」に対応する.大きな箱に入って出られない状況はまさに「怒り続けると『怒りそのもの』になる」ことだろう.


相手を正すのではなく正しいほうに向かうように手助けする,もしくはより狭義である箱から出ることは「怒りではなく『問題』をとらえる」における次の節が対応するだろう.

自分の立場や都合,意見は捨ててしまいます.


箱の兆候を探すことは「怒りを観られた瞬間,怒りは消える」に相当する.


以上,まとめてみるとこの本で述べられていることは「怒らないこと」の主張とよくあっている.人間が幸せに生きていくための真理は人種・宗教によらず同じなのだろう.また,「怒らないこと」では方法論が詳細には述べられていなかったが,この本はその方法を指し示す有力な手かがりであると言える.セットで読むと大変良いと思う.

調査事項

トルコのスルタン,ヌール・アッ=ディーン
ユースフ・サラーフ・アッ=ディーン ←サラディン
イベリンの領主,バリアン
ガリヤラ湖
ルネ・デカルト
マルティン・ハイデガー
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ダビデがゴリアラを一騎打ちで倒す話
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「わたしの隠れ場」コーリー・テン・ブーム著
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