一瞬で相手を落とす!コールドリーディング入門

概要

コールドリーディングについて分かりやすく書かれた入門書.日常会話でも使えそうなテクニックもあるので一読の価値あり.さらっと読める.

内容

第1章 どんな人も一瞬で信じ込ませてしまう!ノーリスク&スーパーハイリターンの危険な話術


1.女子アナを騙す
いんちきスピリチュアルカウンセリング.二人の女子アナがターゲット.二人同時のほうが都合がいい.


2.第一印象で勝負は決まる! でも……
強烈な第一印象を与えられ,失敗してもマイナスにはならないのがコールドリーディングテクニック.


3.つかみが肝心
警戒した二人に対して,血液型ルーズ(ruse*1)で勝負.


4.血液型ルーズ
(雑談)シンクロニシティってご存知ですよね→東京でやったカウンセリングが5人ともO型だった.→二人ともO型なんですか.


5.ノーリスクだから,失敗しても大丈夫
血圧型ルーズがハマったときの破壊力は筆舌に尽くしがたい.血液型ルーズでは相手の血液型は全く当てていない.外れても雑談なので問題ない「不思議なこともあるもんですね」.


6.スーパーハイリターンが期待できる!
また,二人ともO型でない確率は9/16⇒一方がO型である確率は7/16.一人の時の2倍近い確率で当たる.失敗してもノーリスク.タダで宝くじが当たるようなものだ.


7.片想いルーズ
コールドリーディングはハズれた時にハズれたとすら気付かせない驚愕のテクニックである.

  • 片思いルーズ:

「あなたに密かに想いを寄せている人がいます.彼女(彼)は,ずっと告白できずにいたのですが,近いうちにあなたにアプローチしようと覚悟を決めているようです」

これは絶対に外れない.誰も告白しなければまだその勇気がないと言えるし,してきたら当たったことになる.占い師が利用する.


8.ラッキーな金運が……
片思いルーズ(応用):

「近いうちに,非常にラッキーな金運に恵まれるはずですが,今のような消極的な姿勢でいたら,チャンスを見過ごしてしまうでしょう」


本当に偶然拾えば当たり.拾えなくても消極的な姿勢であることを指摘できる.また,インチキであるという反論に対しては

「そうやって疑ってかかる態度そのものがね,まさに否定的な自分を克服できていない証明でしょう?そんなことではお金の神さまは逃げて行ってしまいますよ.」

と言える.DBルーズ.


9.それでも人は騙される!
一人の女子アナに結婚できないということを信じ込ませることに成功した.

第2章 仕事にも恋愛にも効果絶大!コールドリーディングの基本中の基本≪ストックスピール≫とは?

1.フォーラー効果
1949年,心理学者のバートラム・フォーラーが学生達に性格診断テストを実施.全員に同じものを配布したが,半数の生徒は100%当たっていると絶賛.実際には駅の売店で買った雑誌の占星術コーナーから抜き出して作った文章だった.


2.コールドリーディングはストックスピールからはじまる
このレポートに上げられた十二項目は多かれ少なかれ誰にでも当てはまることだった.そしてコールドリーディングの基礎テクニックとして利用されるようになった.このような文章を用いる手法をストックスピール(Stock Spiels *2 )という.


3.十二項目のストックスピール詳解

  1. かなり非現実的な野望を抱いてしまうことがある」:あいまいルーズ
  2. 「外交的で愛想がよく,付き合いがいいときもある半面,内向的で用心深く,引きこもってしまうこともある」:二重人格ルーズ
  3. 自分を素直に出しすぎてしまうのもあまり賢明ではないということを,これまでの人生経験の中から学んできた」:あいまいルーズ
  4. ある程度の変化や自由を好み,縛られたり制限されたりすると不満を感じる」:不満ルーズ,あいまいルーズ
  5. セックスの欲望をうまく適応させることができないことがあった」:あいまいルーズ
  6. 「自分に対して厳しすぎるところがある」:おだてルーズ,DBルーズ
  7. 「外見は自信があるように見えるけれども,心の中ではくよくよしたり不安になってしまう面がある」:二重人格ルーズ,不満ルーズ,おだてルーズ,あいまいルーズ
  8. 「自分の考えをしっかり持っていて,根拠なしに人の言うことを信じ込んでしまうことはないと自負している」:おだてルーズ,DBルーズ
  9. 「これまでの人生の選択や行動は本当に正しかったのだろうかと疑問に思うことがある」:自己幻想ルーズ
  10. 「自分の中にはまだ掘り起こされていない才能が眠っている」:自己幻想ルーズ,おだてルーズ,あいまいルーズ
  11. 「性格に多少の弱点はあるけれども,たいていはそれを埋め合わせることができている」:弱点ルーズ(おだてルーズの変形),あいまいルーズ
  12. 「人から好かれたい,認められたいという欲求が強い」:向上心ルーズ


4.ストックスピールによくつかわれるルーズのまとめ

  • あいまいルーズ:あいまいな表現を使って相手のほうから情報を開示させる
  • 二重人格ルーズ:性格の両面を評価することで「この人は本当の私を分かってくれている!」と思わせる
  • 不満ルーズ:愚痴りたい不満をしゃべらせるきっかけを与える
  • おだてルーズ:おだてていい気分にさせる
  • DBルーズ:イエスでもノーでもヒットする仕掛けを工夫する
  • 自己幻想ルーズ:「本当はもっとすごい自分になれていたはず」という自己幻想に誘う
  • 弱点ルーズ:弱点を指摘することでリーディングにリアリティを出す
  • 向上心ルーズ:相手の向上心を認めてあげることで,リーディングに価値を与える


5.たとえば,ニセ占いではどんなふうに使われるのか?

  • SS3の応用≪あいまいルーズ≫:「あなた,以前に,自分を素直に出し過ぎてしまって失敗した経験があるでしょう?」
  • SS11の応用≪おだてルーズ≫:「性格的にそういう不利な面もありますけど,ちゃんと職場に適応できていますよ」
  • SS10の応用≪自己幻想ルーズ≫≪向上心ルーズ≫≪おだてルーズ≫:「今の職場で,あなたは,期待されているし,まだまだもっと力を発揮できますから」


6.たとえば,営業トークに応用したら……?

  • SS2の応用≪二重人格ルーズ≫≪あいまいルーズ≫≪おだてルーズ≫:「御社は,消費者からは優しいほんわかしたブランドイメージで受け止められていますよね.でも,その半面,社内的にはとても厳しく徹底されているのだなぁと感じました」
  • SS10の応用≪自己幻想ルーズ≫≪おだてルーズ≫:「社員全員がそれぞれにバージョンアップし続けているから,だから御社には,常に新しい可能性を感じるんですね.びっくりするようなビジネスが出てきそうな印象があって,わくわくしますよ」
  • SS1の応用≪あいまいルーズ≫≪向上心ルーズ≫:「これまでも,かなり大胆なチャレンジをされていたこともありましたものね」
  • SS7の応用≪不満ルーズ≫≪向上心ルーズ≫≪二重人格ルーズ≫:「たしかに,外から拝見していますと,社員の方はみんな楽しそうにお仕事されていますものね.でも,ときには悩みと言うか,課題のようなものもあるんじゃないですか?」


7.たとえば,合コントークに応用したら……?

  • SS7の応用≪二重人格ルーズ≫:「アキちゃんってさ,あっけらかんとした性格に見えるけど,本当は,ちょっとした冗談にも傷ついちゃうようなところ,あるんじゃない?」
  • SS12の応用≪向上心ルーズ≫≪弱点ルーズ≫:「人から嫌われたくないって気持ちが,案外,強いんじゃないかなあ?」
  • SS6の応用≪おだてルーズ≫≪DBルーズ≫:「優しすぎるんだよ,きっと」
  • SS3の応用≪あいまいルーズ≫:「昔はけっこうオープンだったんじゃない?でも,心を開いた相手に,裏切られたなんてことがあったんじゃないかなぁ,もしかすると」
  • SS9の応用≪自己幻想ルーズ≫≪弱点ルーズ≫:「もっと無神経な性格だったら,恋愛ももっと楽にできるのになぁって思うことあるよね」
  • SS10の応用≪自己幻想ルーズ≫:「アキちゃんの本当の魅力を引き出してくれる人と出会えるといいのにね」
  • SS4の応用≪不満ルーズ≫:「気を使わずに,ありのままの自分で話せる人って,なかなかいないもんね」

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8.応用は無限! まずは十二項目を徹底マスターせよ!
十二項目のストックスピールを暗唱できるまでマスターすれば,自然と相手をいい気分にさせるセリフが出るようになる.相手の性別・年齢・職業・特徴からより具体的にしていける.


第3章 相手の情報をこっそり引き出す!詐欺テクの基本≪フィッシング/パンピング≫とは?

1.フィッシング/パンピング
フィッシング:会話の中でさりげなく探りながら相手の情報を引き出すこと
パンピング:しつこく質問して聞き出す,誘導尋問


2.ペットルーズ
フィッシング/パンピングの具体例.戸惑いながら「犬,飼ってませんか?」と聞く.相手の反応に応じてコールドリーディングをさせる仕掛けになっている.


3.質問だと思わせない質問の仕方
まず,相手のイメージから何を飼っているか想像する.次に困って考え込むような顔をして少し溜めを作る.相手が何をしているんだろうという表情になったところでペットの話題を切りだす.

「あの,ちょっとヘンなことを聞きますが……犬を飼っていませんか?」
「私もよくわからないのですが,まさか……犬は飼っていませんよね?」
「どうしてだろう?う〜ん,ひょっとすると……犬を飼っていますか?」

最初にペットを霊視して,その後で意味を確認する質問なので相手の反発を生まない.相手から見ると情報→質問の流れになっている.


4.犬は飼っていないけれど……

「犬は飼っていない」
「そうですよね,あなたは犬を飼っているという感じではどうしてもないんですが,あなたの横に,犬のイメージがずっと現れていて……」

  • でも親が飼っている.
  • でも犬にまつわる思い出がある.
  • でも,ずっと飼いたいと思っている.
  • でも,以前に飼っていた.
  • でも,ここに来る途中でかわいい犬を見た.
  • でも,犬が主人公の物語を書いていることろだ.

犬のイメージが何を意味しているのかを相手に考えさせ,巻き込む.これにより更なる情報が手に入る


5.教祖にもなれる?
飼っていた犬が昨日死んでしまったというような場合は相当なインパクトを与えられる.数が少ないが強烈なヒットがあると噂される占い師となる.


6.ペットルーズをマスターしたら
ズームイン/ズームアウト,ダイナミックフォーキング,サトルネガティブ,サトルクエスチョン等のテクニックもある.


第4章 話しベタほど上達が早い!初対面で一気に落とす会話のコツ

1.当てモノではない
当てモノのような態度であると当たった/当たらないで相手と対立関係になる.積極的にしゃべらせるために,対立関係ではなく協力関係(ひとつのテーマを二人で向き合う)を築かないといけない.


2.ドッペルリーディング
アメリカのアライン・ヌー氏によるネーミング.初対面の相手を見て,自分の知っている中で似ている人を想起する.そしてその知り合いの長所を話す(e.g.英語が堪能なんじゃないですか?).当然短所はNG.


3.無口な相手にしゃべらせるコツ
最初はあえて聞き役よりも自分の個人的なことを雑談風に切りだす.相手の対抗心をくすぐる呼び水とする.こちらの個人的なことなど退屈である.質問攻めはNG.口下手なほうが効果的.


4.「こいつは違う!」と思わせる褒め方
たいていの人が気付き,会話の糸口にする(ファッションetc)以外の部分に注目する.おだてなので実際には素敵ではなくてもよい.

「声がとってもあったかい感じで素敵ですね」
「名刺の出し方が,なんか,エネルギッシュでかっこいいですね.何かスポーツをされてたんですか?」


5.要注意! 「つまり」「要するに」「一言でいえば」はNGワード
まとめる言葉は相手の努力・想いをすべて無駄な部分として切り捨てることになる.情報をまとめるコミュニケーションは否定された感じがするため,どんどんしゃべってくれなくなる.


第5章 言葉のトリックだけじゃない!コールドリーダーの武器は≪観察力≫

1.稀代のコールドリーダー,シャーロック・ホームズ
コールドリーダーにとって最も重要なのは観察力.初心者はテクニックに走るばかりに,相手に全く無関心だったりするがナンセンスである.リーディングのヒントとなる情報は相手の中にある.


2.観察力の本当のところ
観察力という最も大切なスキルについて方法論が語られることがない.


3.コミュニケーションにおける≪観察≫とは何か?
観察という言葉自体に落とし穴がある.


4.客観的観察の落とし穴
客観的観察を行うと,観察する自分と観察される相手とに二分してしまう.しかし,実際には相手の心と一体になることが求められる.


5.内側から観る
相手の心と一体になることは共感とは異なる.共感は感じてあげている私にフォーカスしてしまう.あくまで,相手の内側から相手を観察するのだ.


6.コミュニケーションにおけるの≪観察≫コツ

「もし,私の心が,この人の中に入り込んで,この人の心そのものになって,この人の心の内側から,この人自身を感じてみたら……どんなことが心に浮かぶだろう?」

数秒でもこのように考えることで相手の気持ちが理解できるようになる.そうでなくてもラポールは向上する.


7.コールドリーディングは生きている
テクニックはきっかけに過ぎない.

リーディングをしているのが,自分であって自分でないような感覚.私が言葉を使っているというよりも,むしろ,言葉が私を使っているというような,そんな感じを体験するのです.

感想

相手の立場に立ち,相手の考えていることに同調するのはハーバード流交渉術のステップ2「武装解除」と通じる.逆にいえば,交渉術において相手の考えに同意し,相手の不満をすべて吐き出させるためにコールドリーディングは有効であると言える.


また,最後の引用部分はコールドリーダー自身が変性意識状態になっているかのようである.十二項目を暗唱する上で,念仏のように唱えることで変性意識状態に入りやすくなっているのかもしれない.この場合,相手も変性意識状態に引きずられ,よりコールドリーディングが成功しやすくなると考えられる.「ラポール」はまさにそのような状況を指しているのではないか.

調査事項

「一瞬で信じ込ませる話術 コールドリーディング」
「なぜ,占い師は信用されるのか?」
「コールドリーディング」

*1:a trick or clever plan

*2:the things that someone says on a particular occasion, especially things that are not interesting or sincere because they sound like a prepared speech