死ぬときに後悔すること25

死ぬときに後悔すること25

死ぬときに後悔すること25

概要

緩和医療医(終末期の患者の苦痛を和らげる)が,多くの患者を看取る中で発見した「死ぬときによく後悔すること」をまとめた本である.33歳の人が書いたとは思えないほど,人生に関する深い洞察がうかがえる.


がんの終末期には体力が極端に低下し,寝ている時間が多くなる.そのため,そこでやり残したことがあってももうできないかもしれない.だから,元気なうちにやり残しのないようにすれば後悔も少ない,というのが趣旨である.

内容

第一章 健康・医療編

1.健康を大切にしなかったこと

現在,死因の一位は「ガン」で34万人超,二位は「心疾患」で18万人余り.メタボを気にするよりもガンを気にするべきである.怪しげな「がん予防」よりも早期発見が最も良い.通り一遍の健康診断的人間ドックでは早期のがんはほぼわからず,見つかった場合はかなり進行している.治らない治療にお金をかけるぐらいなら,最初に検査に使うほうがよい.一般層はこのあたりの情報に疎く,富裕層ほど検査に力を入れる.健康の格差社会である.


2.たばこをやめなかったこと

後悔するぐらいなら吸わないほうがいい.たばこは禁煙しなければ意味がない.ほどほどに吸っても大量に吸ってもがんリスクは変わらない.


3.生前の意思を示さなかったこと

死ぬ直前には話ができず,意識もなく,動けない.混乱も生じ,自分の意思はもう伝えられない.延命治療をしてほしくないと思っても,家族が望むという状況は往々にしてある.

したがって,良心的代理人に意思を伝えたり,紙に記しておくのがよい.ただし,それも完ぺきではないので,日頃から遠慮なく自身の死生観等を話し合うことが重要である.


4.治療の意味を見失ってしまったこと

少しでも長く生きる治療と,生活の質を確保したまま最期を迎える治療は共存できないことが多い.

ゆえに,延命治療に終始すると,生活の質が著しく損なわれることがある.

ただ生きることに意味はなく,できるだけ良い時間を過ごせるようにするのが大切ではないか.

治療を続けていたら,いつのまにか死期が迫っていた.このような後悔を訴える人は少なくないのである.延命治療を断ち切ったときに,本当の希望がパンドラの箱のように残っていることを知るべきだ.

第二章 心理編

5.自分のやりたいことをやらなかったこと

我慢し続けてもいいことはない.命の時間は短い.自分に嘘をついてきた人は必ず後悔する.普段からやりたいとことやり,他人に迷惑をかけないという前提でもう少し好き勝手生きてもよいのではないか.やりたいことはさっさとやるべきだ.

予定調和ばかり気にして,あるいは周囲と和することばかり考え,空気を読みすぎるのは明らかに精神衛生上良くないし,そのような無形の長年のストレスが病気を生む可能性もある.


6.夢をかなえられなかったこと

夢をかなえられなかったことよりも,夢をかなえることに全力を尽くさなかった・夢を持ち続けられなかったことに後悔する.


7.悪事に手を染めたこと

因果律的発想で病気になったことは自分に非があるからだと考えるのは誤りである.

度が過ぎる罪悪感は,自らを損なうだけである.

犯罪を犯すと結局は自分自身を苦しめる.一線を越えるべきではない.


8.感情に振り回された一生を過ごしたこと

死を前にして,人は平等である.それを理解すれば些細なことに心惑わされるのはばからしい.

感情に振り回され,特に否定的感情にとらわれたまま生涯を過ごせば,残るのは後悔ばかりである.冷静な心の先に,笑いを見いだすことができれば,後悔は少ないに違いない.


9.他人に優しくしなかったこと

他人を蹴落とすことで行き残った強者も死ぬときは弱者となる.その時,自分の今までの行いを後悔する.

人をいじめることがよくあるのなら,心を入れ替えたほうがよい.優しさが足りないのならば,優しさを意識したほうが良い.それらは死が迫った時の,後悔の一因となる.他を蹴落とし,どんな勝負に勝ってきたとしても,同じように努力しても決して勝利できないのが死である.けれども,生の終わりを敗北でなく,完結ととらえられるのならば,死は恐るべきものではなくなる.


10.自分が一番と信じて疑わなかったこと

自分の行動に誤りはない,と常に肯定的に生きることはプラス思考であり悪いことではない.しかし,自分が絶対に正しいということに疑いを持ってみることで新しい世界が開ける可能性がある.一歩引いて物事を見ることが肝要である.


第三章 社会・生活編

11.遺産をどうするかを決めなかったこと

富裕層ほどしっかりしている.残すものなどない,という人ほど壮年期の子にとっては十分すぎるほどの資産を持っている.介護意欲にも結びついたりして人間の本性を垣間見たりしてしまう.元気なうちに子を集めて遺産について話しておかなければならない.一回ですべてを決めるほうがよい.病気になってからこの作業は非常に大変である.


12.自分の葬儀を考えなかったこと

生前葬や葬儀の準備を自分で周到にするとよい.そうすれば家族に不要な負担を強いたり,自身の望まない無駄に華美な葬儀を避けることができる.


13.故郷に帰らなかったこと

死期が迫ると若いころを思い出す.死期に過去を語ることをライフレビューという.また,せん妄という混乱を生じ始めることもある.その時に昔のことを語りだす人もいる.

元気なうちはなかなか時間がとれずに帰ることができないが,そうこうしているうちに死期が迫って帰ることができなくなってしまう.そうなって後悔する前に,一度帰って自身のルーツを再確認するのもよい.


14.美味しいものを食べておかなかったこと

死期が迫ると体力が落ち,食欲がなくなる.そこで無理に食べても体力が回復することはない.しかし,周りはどうしても食べさせようとして,患者はつらい思いをする.

また,病気で味がわからなくなる.好物だったものもおいしく感じられなくなる.だから元気な間に好きなものを食べておくべきだ.

とにかく病気になると,今までと食生活は変化せざるを得ない.であるからこそ,健康なときこそ,己の好きなものを食べることの他に,家族や友人たちとその「かけがえのない」時間を共有する機会が多くあったほうが,後悔は少ないものと思われる.


15.仕事ばかりで趣味に時間を割かなかったこと

仕事=人生であると,終末期には生きがいの大きな柱が失われてつらい.仕事以外の生きがいがあったほうがよい.終末期のために持つ必要はないが,人生を豊かにするという意味で,一つの趣味を長年追い続けるのはよいのではないか.


16.行きたい場所に旅行しなかったこと

終末期の旅行は困難である.体力の低下に加え,各機関が大事を取って許可を出さない.また,明らかに他人に迷惑をかける状態では行くべきではない.したがって,旅行はできる間にどんどんしたほうがよい.


第四章 人間編

17.会いたい人に会っておかなかったこと

人の死は意外と近くにある.会いたいと思っても,もう会えないかもしれない.一期一会の精神で会いたい人にはきちんと会っておくべきだ.

人は確かに一人で生まれてきて,一人で死んでいくものである.一生は孤独な旅なのかもしれない.けれども,人は終わりまで他者を求めて止まない.


18.記憶に残る恋愛をしなかったこと

もっと良い恋愛をしておけばよかった,と嘆く人はさすがに少ない.しかし,大恋愛・障害の多かった恋愛ほど,最期の日々を豊かなものにする.

良い恋愛は,自分がこの世界に生きた証として,死出への道を照らすだろう.


19.結婚をしなかったこと

様々なライフスタイルがあるが,死を目前にして結婚をするカップルは多い.結婚という儀式により,二人の絆がゆるぎないものになるからだ.

家族関係,特に夫婦が血縁を越えた深い結びつきでつながっている場合は,終末期の苦悩も大きく減じるのである.


20.子供を育てなかったこと

独身者からよく聞かれる後悔.実利を考えて家族を作るのは誤りであるが,死期が迫った時,人はその絆を求めて止まない.

家族はいつでも大切にするべきだ.絶えざる思いやりの心を持つことの大切さと,それがゆえに後悔が少なかった家族を私はたくさん知っている.


21.子供を結婚させなかったこと

子が独身であると,死期の迫った親は心配なものである.特に社会的外圧が少なくなった現代は非婚社会になりがちだ.逆に,自分のために子供を手元に置いておくのはおかしい.成人したら一人暮らしさせ,自立させるべきだ.

第五章 宗教・哲学編

22.自分の生きた証を残さなかったこと

できるだけ早く人生の総括はしておくべきだ.また,短期間で何かを残す計画を立て,達成しながら生きるとよい.また,大がかりな作品ではなく,家族に手紙を残すというのもよくある.

死期が迫って後悔しないように,自らが生きた証を積極的に残そうとするべきである.またその行為が,後の人々の力となるのである.誰かの人生はその人に固有のものであり,他者がそこから学びや気付き,そして癒しや勇気をもらうことも稀ではない.自らの後悔が減るばかりか,他人の人生の苦しみも減らしてしまうかもしれない.


23.生と死の問題を乗り越えられなかったこと

生は他者との関わりの中で定義づけられるものかもしれないし,それだけではないのかもしれない.いずれにせよ,自分自身で生と死の意味をある程度確信していないと(マイ哲学),死期がつらいものとなるかもしれない.

もっと生と死について知り,それに対して己の考えを確立できれば,間違いなく終末期となっても後悔や恐怖は少ないし,もちろん元気なうちからそれが心の柱としてあれば,たくましくこの世を生きていけるに違いないと思っている.


24.神仏の教えを知らなかったこと

時間存在・関係存在・自律存在のうち一つ以上の要素が揺らぐとスピリチュアルペインを感じるという村田理論がある.終末期には自律存在が揺らぐため,他者との関係による関係存在や,来世を信じる時間存在が恐怖を和らげる.

また,得るものが多かった人間ほど失うものが大きく,最後は何かにすがりたいのかもしれない.

宗教を通し,真実を見通す目を養わなければいけないと思う.

第六章 最終編

25.愛する人に「ありがとう」と伝えられなかったこと

「ありがとう」
それは後悔のない最期のために,必要な言葉だ.

感想

死を知ることは生を知ることである,とつくづく感じた.歴史を知り,宗教を知り,哲学を知ることは自身が生きていく上での指針を与えてもらえるかもしれない.


生きている間に何を成し遂げるのかを明確にしなければならない.それを細かい単位で実行し,満足感を得ながら歳を重ねたい.


自分が正しいと思いこまず,怒らない日々を送りたい.人には優しく接したい.


仏教の悟りは,死ぬときの後悔を減らしてくれるのかもしれないと思った.